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【電子化ラボ】文書の電子化に関する法律
企業や組織として文書の電子化を検討する場合、関連する法律の概要はおさえておきたいものです。特に、その文書が法律で保存するように定められているものだとしたら、どのような規定があるのかあらかじめ知っておくことで、より具体的な検討ができます。
そこで今回は、保存義務のある文書の電子化保存を容認し、規定を設けている法律として、「e-文書法」と「電子帳簿保存法」をとりあげながら、その大枠についてお話ししたいと思います。
どんな文書が対象なのかな?電子化するときに何か必要な条件はあるのかな?
まずは全体から見てみよう!
文書の電子化保存を容認する、e-文書法と電子帳簿保存法
e-文書法のはじまり
企業活動等で生じる文書には、法令によって保管が義務づけられているものがあります。証憑書類や定款、取締役会議事録といった一般的なものから業種特有のものまで、該当する文書は多種多様です。
以前はこのような文書は紙媒体で保存しなければならず、スキャナで電子化して保存することは認められていませんでした。
この紙媒体による文書の保存義務は、IT化が進んだ現代の業務環境において企業の経営活動や業務効率化の妨げとなっており、また、文書によっては7年、10年と長期に渡って保管する必要があることから、そこにかかるコストも課題となっていました。
このような背景から、電子的な保存への要望が高まり、“民間における文書・帳票の電子的な保存を原則として容認する統一的な法律”が制定されました。それが、e-文書法(2005年4月施行)です。
e-文書法は、これまで紙による保存が義務づけられていた文書を、スキャニングした電子化文書として保存してもよいと“原則的に”認めました。これは電子化文書に原本性を認めることであり、紙を保存しておかなくてもよい―廃棄するという選択も可能になったということです。
電子帳簿保存法の改正
さて、このe-文書法の対象文書のうちの半数は、帳簿や決算関係書類といった国税関係書類に該当するのですが、この国税関係書類の電子化保存については、電子帳簿保存法に規定があるので留意が必要です。
電子帳簿保存法は、1998年7月に電子データによる帳簿運用を認めた法律ですが、e-文書法の施行にともない2005年3月に改正され、これまで認めていなかったスキャニングによる電子化保存の規定が追加されました。このため、国税関係書類に関しては電子帳簿保存法の規定に従う必要があるのです。
文書の電子化を容認する法律はひとまとめにしてe-文書法と呼ばれることが多いのですが、このように対象となる文書によっては、電子化保存を規定する法律が異なることがあります。
そのため、法律による保存義務のある文書の電子化を検討するときは、その文書がe-文書法と電子帳簿保存法の双方において、どのように規定されているのかを把握する必要があるのです。
e-文書法と電子帳簿保存法のスキャナ保存(電子化保存)における相違
では、e-文書法と電子帳簿保存法におけるスキャナ保存(※)には、どのような相違があるのでしょうか。下記の表にまとめてみました。(※紙文書をスキャナで電子化して保存すること。電子化文書。法律上ではこの表現が使用されています)
e-文書法 | 電子帳簿保存法 | |
対象となる文書 | 原則として、保存が義務づけられているすべての文書(文書の保存を規定する法律298本のうち251本の対象文書) | 一部を除く国税関係書類 |
対象外の文書 |
|
|
スキャナ保存による電子化要件 |
*4要件すべてが求められるのではなく、対象文書によって1~3要件が規定される。 |
*この要件は「スキャナ保存」する場合のもので、帳簿を「電子保存」・「COM保存」する場合は要件が異なる。 |
必要な手続き | 法律で規定される手続きはなし | 所轄の税務署長に事前申請し、承認をうける |
まず注目したい点は、e-文書法、電子帳簿保存法ともに一部対象外の文書があるところです。
対象外の文書は、スキャナ保存に原本性が認められていないため、これまでと同様に紙で文書を保存しておく必要があります。
つぎに、スキャナ保存する際の電子化要件には、かなり相違があります。e-文書法には4つの要件がありますが、すべての文書にこの要件が要求されるわけではありません。対象文書の多くは見読性だけ確保すればよく、機密性については法的に要件として指定されている文書はありません。また、完全性は税や医療、消防関係の文書、検索性は財務省関係の文書、と一部の文書に対して要求されています。一方、電子帳簿保存法では基本的に真実性と可視性の要件を満たすスキャナ保存をする必要があり、検討すべき事項が多いと言えます。
また、スキャナ保存を行う場合も、e-文書法では法律として義務づけられた手続きが特にないのに対して、電子帳簿保存法では、税務署長への事前申請と承認がなければスキャナ保存による運用は開始できません。
特に気をつけることは、同じ文書でも別の法律で異なる保存要件が規定されてる場合があること!たとえば、商法で保存が決められている貸借対照表は、e-文書法だと見読性しか要求されていないけど、電子帳簿保存法だとスキャナ保存自体が認められてないんだ。こういう違いがあるときは、より厳しい要件の方にあわせないといけないから、確認が大事だね。
まとめ
e-文書法に関しても電子帳簿保存法に関しても、保存義務のある紙文書を「スキャナ保存してもよい」としている法律であって、紙文書自体を廃棄しなければならないものではありません。ただ、「スキャナで電子化して紙は廃棄したい」「国税関係書類の運用をスキャナ保存に切り替えよう」と考えられている場合は、これらの法律の規定を知ったうえで計画を立てる必要があります。
今回は全体的なお話でしたので、e-文書法と電子帳簿保存法それぞれの詳細については、回をあらためてご紹介していきます。
なお、もともと法律による保存義務がない文書については、このような規定による制限は受けませんので、法律上の電子化要件は参考としつつ、ご自身の目的に合う電子化に取り組んでいただければと思います。