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【電子化ラボ】CD・DVDでデータを長期保存する方法
こんにちは、電子化ラボのコーナーです。 今回は電子データの保存によく使われているCD・DVDに関するお話です。
デジカメで撮った写真を友達に渡したり、好きな音楽を入れてドライブ中に聴いたり、CDやDVDって
いろんなかたちで気軽に使えるよね。ぼくたちの電子化サービスでは、作成したデータをお客様にお渡
しするときに、納品媒体やバックアップ用メディアとしてよく使っているんだ。
電子データの記録媒体にはフラッシュメモリや外付けHDDなどさまざまなものがありますが、そのなかでもCD・DVDは、長期保存(10~30年)に安定して対応可能と評され、「電子化文書の長期保存方法」の規格であるJIS Z6017において電子化データの保存用媒体として指定されています。
JIS Z6017:2006 電子化文書の長期保存方法
規格概要:
紙文書又はマイクロフィルム文書を電子化し,電子化文書を長期保存するための画像品質,ファイル形式,記録媒体のハードとその利用システム,見読性の仕様,媒体移行の手順,改ざん防止,セキュリティ,廃棄などについて規定。
(2006年12月20日制定)― 日本規格協会 JSA Web Storeより
しかしながら、正しい方法で運用や保管を行っていないと、せっかく長期保存が可能なCD・DVDを使用していても、“データが読み取れない”という障害が発生する恐れがあります。
では、CD・DVDに記録したデータを長期的に保存するためにはどうすればよいのでしょうか。
JIS Z6017の内容をもとに、その方法についてご紹介します。
CD・DVDの障害要因とエラーレート
CD・DVDでデータが読めない障害が起こる要因には、主として次のものが挙げられます。
- 保存環境・取り扱い方法
例: 記録面への傷や汚れ、急激な温湿度の変化など - 記録媒体の品質
例: CD・DVD自体の品質の低さなど - 記録時の条件
例: ドライブ装置の性能、記録媒体との相性など
このように、一般的な経年劣化だけでなく、媒体の品質やデータ記録時の状況といったさまざまな要素がCD・DVDといった光ディスクの劣化につながる恐れがあるのです。劣化している光ディスクは障害の発生確率が高いため、中身のデータを失わないように手を打つ必要があります。
でも、傷や汚れみたいに光ディスクを見ればわかるものばかりじゃないよね。
そんなときに行わるのが、CDやDVDがどのくらい劣化してるか把握できる“エラーレート”の計測です!
エラーレートとは
CDやDVDに記録したデータを読み取るときに発生するエラーの割合(データ読み出し時の誤り率)を示す指標をエラーレートといいます。記録媒体とドライブ装置の組み合わせが良好かどうかの判断基準として使用され、これにより、媒体の品質レベルや劣化状態も確認できます。
もともと、CDやDVDといった光ディスクは読み取り時にエラーが発生するものとされ、エラー訂正機能を備えた作りになっています。普通にデータが読めているときも、光ディスク側で調整してくれているというわけですね。ところが、光ディスクが劣化している場合、この機能では処理しきれないほどのエラーが起こってしまい、その結果データを読むことができないという障害になるのです。
エラーレートの計測は、エラーレート検出が可能なドライブ装置や専用の測定機器を使用して行います。
検査の結果、光ディスクに劣化が確認された場合、その媒体は長期の保存には耐えられない状態ですので、マイグレーション―つまり、新しい媒体にデータを移行する必要があると判断できます。
CD・DVDで長期保存するための3つのポイント
では、CD・DVDのデータを長期的にもたせるためにはどのような運用がよいのでしょうか。
JIS Z6017からポイントをまとめてみました。
1. 保存環境と取扱いに気をつける
まずは基本として、データを記録するCD・DVDを正しく扱うことが肝要です。
記録媒体の管理方針を策定し、物理的な劣化につながる下記の事項に留意して運用します。
- 必要な情報(タイトルや管理番号など)は、印字領域に記載する
- 保存時は常にケースに入れた状態にする
- ディスクの中央またはエッジを持ち、記録面にほこり、傷、指紋などが付かないようにする
- 急激な温度・湿度の変化を与えないようにする
- 外光が直接当たらないように保存する
2. エラーレートを計測する(新規記録時/定期検証)
専用機器などでエラーレートを計測し、光ディスクの状態をチェックします。
計測を行うタイミングは次のとおりです。
新規記録時(初期検証)
新しく光ディスクにデータを記録したときに計測します。良好な状態で記録できているかどうかは、記録媒体自体の品質のほか、ドライブ装置の性能、ドライブ装置の劣化具合、ドライブ装置と記録媒体の相性、記録速度といった条件によって左右され、新しく保存したばかりにも関わらず高いエラーレートが検出されるものがあるためです。最初の記録品質を高くしておかなければ、長期保存は期待できません。
*光ディスクは信頼できるメーカー品を採用すること。
(ただし、光ディスクにも個体差があると考えられているため、初期検証を行うことが大切)
定期検証
光ディスクの劣化状態を定期的にチェックします。目安の期間としては3年ごとで、計測の結果に問題がなければそのまま保存しておくことができます。
3. 記録媒体をマイグレーションする
検証の結果、エラーの発生数が高くなっている場合は別の新しい記録媒体に中身のデータを移行します。媒体移行したあとは新規記録時の計測を行い、問題がなければそのまま次の定期検証まで3年間保存します。
*マイグレーションの要否については、エラーレート区分を参照して判断します。
(ページ下部「参考情報」を参照のこと)
JIS Z6017は“電子化文書の長期保存”の規格ですが、CD・DVDでの運用・保管方法については、中身が他の電子データでも参考にできるものだと思います。
この3つのなかだと、すぐできそうなのは1個目だね。CDやDVDは専用保管庫で保存するのがいいけど、
一般的なオフィスでもなるべく推奨されている条件にそって保管しておけば、いきなり劣化しちゃうって
ことは避けられるよ。
エラーレートはチェックできる機器が必要だから、本当に大切なデータはそういう検査をしてくれるところ に頼んでみるといいかも。ぼくたちのところでもCD・DVD、あとBD(Blu-rayDisc)のチェックを受けて いるので気になったときは聞いてみてね✿
まとめ
今回はCD・DVDを取り上げてお話ししましたが、どのような寿命の長い記録媒体であっても、形あるものは何らかの原因で破損や逸失するリスクがあります。また、新しい規格の媒体によって従来の媒体が廃れていくという流れも止めることは難しいものです。
さらに、データを長期に保存したとしても、それを使用するための環境を用意することが課題として残ります。電子データが作成されたときの環境(OSやアプリケーションのバージョンなど)と異なる再生環境では、電子データが開けない等、使えなくなることがあるというリスクはご存じのとおりです。
このような場合は、記録媒体のマイグレーションだけでなく、電子データのフォーマット変換なども検討しなければなりません。
ちなみに、JIS Z6017では長期保存のための電子化文書フォーマットとしてPDF(PDF/A)とTIFFが指定され、文書に関するメタデータ(属性情報)はテキスト形式とされています。電子化文書ではない電子データの長期保存フォーマットとして、PDF/Aを検討すると良いかもしれません。
データをCDやDVDに保存したら、「これがあればいつでもデータを見られる」ってついつい安心しちゃうけど、記録媒体も絶対ではないんだ。光ディスクを長く保存できるように運用したり、別のストレージにもバックアップをとっておいたり、データを失わない工夫をすることが大切だね。
最初からデジタルで作成されている電子データ(ボーンデジタル)、原本を廃棄してしまった電子化データ(電子化文書)など、デジタルでしか保有していない情報は増えてきています。大切な情報を失わないために、適した運用・管理に取り組んでいきたいですね。
補足:JIS Z6017に関する現在の動向
2006年に規格として制定されたJIS Z6017「電子化文書の長期保存方法」は、現在見直しの段階に入っており、改正版では新たにBlu-ray Discに関する記述が盛り込まれる予定です。今年の4月にはその前段階として、「電子化文書長期保存のためのBlu-ray Disc™検査基準及び取扱いに関するガイドライン」も発表されています。日本画像情報マネジメント協会のサイトでご覧いただけますので、もしご関心があればご一読ください。
参考情報
JIS Z 6017におけるエラーレート区分
JIS Z6017では、エラー数値の閾値によって1から3までのエラーレート区分を設け、ドライブ装置と記録媒体(CD・DVD)についての状態と必要な対応を次のように示しています。
検査時期 | エラーレート 区分 |
状態と対応 | CDの エラー数値 (CIエラー) |
DVDの エラー数値 (PIエラー) |
新規記録時 | 1 良好 |
ドライブ装置、記録媒体ともに問題なし。3年ごとのエラーレート検証は必要だが、10~30年の長期保存が可能な状態。 | 80未満 | 100未満 |
2 障害が発生する確率が高く即座に対策を要する |
他のドライブ装置で再検証する →良好: ドライブ装置を交換して再検証 →区分2: 別の記録媒体に登録し、検証 |
80以上 | 100以上 | |
定期検証 (3年ごと) |
1 良好 |
ドライブ装置、記録媒体ともに問題なし。また3年後にエラーレート検証を行う。
|
110未満 | 140未満 |
2 速やかに対策が必要な状態 |
他のドライブ装置で再検証。 →良好: ドライブ装置を交換して再検証 →区分2: 1年以内にマイグレーションを実施 |
110以上 ~220未満 |
140以上 ~280未満 |
|
3 障害が発生する確率が高く、即座に対策を要する |
他のドライブ装置で再検証 →良好: ドライブ装置を交換して再検証 →区分2: 1年以内にマイグレーション →区分3: 即座にマイグレーション |
220以上 | 280以上 |
※上記の表はJIS Z6017の規定を要約したものです。
エラーレート検証結果の例
下記は、DVDの定期検証として、専用機器でエラーレート計測した結果のグラフ(例)です。縦軸がエラーの発生数、横軸が光ディスクの半径(内周24インチ~外周58インチ)を示しています。これによって、媒体のどの部分でどの程度の読み取りエラーが発生しているかがわかります。グラフ上の黄色と赤色の横線は、エラーレート区分の閾値に対応します。
左は良好な状態の例です。DVDのどの部分でもエラーの発生数が低く、データ読み取りに問題が無いことがわかります。一方、右は即時にマイグレーションが必要なケースの例です。このDVDは内周で区分3に該当するほどのエラーが出ていますので、速やかに別の媒体にデータを移行する必要がある、と判断されます。